3安打でも、気引き締め 花咲徳栄・若月健矢選手(2年)

 その一打に、球場全体がどよめいた。

 一回表2死三塁。「何とかして(走者を)還したかった」。体勢を崩されながらも真ん中低めのスライダーに食らいつくと、打球はぐんぐん伸びて左翼席に吸い込まれた。「野手が打球を見送ったのを見て、本塁打に気が付きました」

 打力や肩の強さを買われ、1年時から正捕手に抜てきされた。しかし初出場した昨秋の関東大会はノーヒットに終わり、チームも初戦敗退。その反省から打撃力の強化に取り組んだ。これまでに重ねた本塁打は10本以上。大舞台でいきなりその力を発揮した。

 この日は本塁打を含め3安打の活躍を見せたが、試合後に笑顔はなかった。県大会で好調だった関口明大投手(2年)らが登板したにもかかわらず、5点を失ったからだ。「リードはまだまだ」。悔しさをにじませた。

 関東大会優勝が目標だ。「相手がどこだろうと自分たちの野球をするだけ」。そう言って表情を引き締めた。

毎日新聞埼玉版)