主役は南稜 仕掛けて一気に決着 春季高校野球県大会

 南稜が五回に奪った5点を高瀬、佐野の継投で守り切り、埼玉栄の反撃をしのぎ切った。

 南稜は五回無死一、二塁から高瀬の犠打が悪送球を誘い先制。野選と敵失で2点を追加すると、2死二、三塁から竹原が右越えの2点三塁打を放ち一挙5点を挙げた。先発高瀬は6回を1失点。継投した佐野が九回1点差まで詰められたがピンチを併殺で切り抜けた。

 埼玉栄は九回に代打佐々木の三塁打、猪野の中前打で2点を返す粘りは見せたが、五回の守備のミスが最後まで響いた。

◇8割の力で打線翻ろう 高瀬

 右下手から繰り出す変化球で先発高瀬が埼玉栄打線を翻ろう。6回1失点の好投で優勝への道筋をつくった。高瀬は「単打ならオッケーと低めに集めた」と打ち取った。

 変化球主体に直球を織り交ぜ、打たせて取るのが身上だ。好投の秘訣は「八割の力」(高瀬)。全力を出すと力んでしまい、思うような投球ができない。六回に3安打を浴びて1点を返され、2死一、二塁のピンチもこれで乗り切った。初優勝を手繰り寄せ、「関東ももちろん優勝します」と笑顔がはじけた。

◇仕掛けて一気に決着

 “波乱の春”を制したのは、大会前はノーマークだった公立校だった。南稜が埼玉栄の追撃を必死の守備でしのぎ初優勝。「夏の甲子園を懸けた決勝だと思って戦え」と、あえてプレッシャーをかけてナインを送り出した遠山監督も、「すごいですね。びっくりしました」とその戦いぶりに目を細めていた。

 初の決勝戦でもナインは“らしさ”を存分に発揮した。形になって現れたのは、攻撃前の円陣で「積極的に仕掛けて点を取るぞ」と声を掛け合った0−0の五回だ。

 先頭の佐伯が左前打、続く中田がエンドランを敢行した。これが三塁手の失策を誘い一、二塁とチャンスを広げると、高瀬の送りバントを相手投手が一塁へ悪送球し先制した。その後、野選で追加点。なおも一、三塁から上農が二盗を仕掛け、捕手の悪送球で三塁走者葛城が3点目の生還を果たした。

 「プレッシャーをかけて、しつこくゴロを転がせていた」という指揮官も納得の攻撃の締めくくりは主砲竹原の一打。「自分が打って決めてやる」と右越え三塁打でさらに2点を加え、この回一挙5点を奪い大勢を決めた。

 投げても先発高瀬の後を継いだ佐野が右胸に打球を受けながらも、気迫の投球。「最後は気持ちだけだった」と1点差に詰められた九回も、最後の打者を併殺に切って取った。

 昨秋は地区1回戦で敗退。そこから一冬を越え、ぶれない戦いぶりで、春日部共栄にサヨナラ勝ちするなど、8試合を勝ち抜き頂点まで登り詰めた。主将の武井は「埼玉の代表に恥じない戦いをしたい」。地元開催の関東大会でも自分たちの野球を貫き、旋風を巻き起こす。

◇ここぞで決勝打 竹原

 ここぞの場面での勝負強さが頼もしかった。3番竹原が1安打2打点でチーム初優勝に貢献。「素直にうれしい」と端正な顔をほころばせた。

 五回2死二、三塁。追加点を奪う絶好機でフルカウントからの6球目、内角の直球を振り抜いた。「外野を越える」と手応えを感じた打球は力強く、右越えの2点三塁打。これが決勝打になった。竹原は「勝負を決定付けられたかな」と安堵の表情を浮かべた。

 1年生から主力で活躍し、最上級生となった最初の大会で「自分がやらなくちゃ」と結果を残した。チームは埼玉県史に新たな歴史を刻んで関東に乗り込む。「初戦から強豪が続くが挑戦者の気持ちでぶつかって行く。これからが本当の勝負」と前を見据えていた。

◇ミス連発、流れ失う 埼玉栄

 五回の守りが全てを狂わせた。高い総合力で初の頂点を狙った埼玉栄に、連続失策で喫した5失点が重くのしかかった。細淵監督は「ミスが出て全員が浮足立ってしまった」と無念さをにじませた。

 五回無死一塁から、内野陣が2連続で一塁へ悪送球し先制を許してしまった。足で揺さぶりをかけてきた南稜に対し、さらに野選、また悪送球とミスを連発。大量失点で流れを失った。バント処理で一塁に悪送球し失点した佐藤大は「自分のフィールディングのせい」と肩を落とした。

 ここから開き直り、終盤に追い上げ。3点差の九回には代打攻勢から2点を返して1点差に迫った。しかし1死一塁、勝負に出たエンドランで、神山の当たりは右飛だったが、一塁走者猪野は戻れず力尽きた。

 地区大会から準決勝までの6試合で44得点、5失点と総合力は十分。目前で栄冠を逃した選手たちは「甘さが出た」と口をそろえ、「自分も含めてミスがなければ勝てた試合。悔しさをぶつけたい」と主将の高橋。気持ちを切り替え、関東の強豪に挑む。

◇代打起用で反撃の一打 埼玉栄・佐々木

 3点を追う九回無死一塁で代打に立った埼玉栄の佐々木。「絶対に逆転できると信じていた」と高めの直球を見逃さず、右翼手の頭上を越える適時三塁打を放った。塁上で「自然に出た」と全身で喜びを表現しチームを鼓舞した。

 細淵監督も「ここぞという場面で素晴らしい打撃だった」と集中力を絶賛。「1点取れたことはよかったが、もう負けるのは嫌だ」と気迫を前面に出す佐々木は、「関東で優勝して夏につなげていきたい」と雪辱に燃えていた。

埼玉新聞