南稜、一丸の初4強 春季高校野球県大会

 (1日・上尾市民ほか)

 第7日は準々決勝4試合が行われ、南稜、川口、埼玉栄がそれぞれ勝って4強入りするとともに、埼玉で開催される関東大会(19〜23日・県営大宮ほか)への出場を決めた。南稜、川口はともに初のベスト4で初の関東切符。埼玉栄は3年ぶり5度目。

 浦和学院−春日部東は延長十五回、1−1で引き分け、再試合となった。春日部東は蕨との2回戦に続く今大会2度目の再試合。

 南稜は延長十二回、2死二塁から竹原の右前打で昨秋4強の春日部共栄に5−4でサヨナラ勝ち。川口は4−4の九回、2死一、二塁から高窪の二塁打で2点を勝ち越し、所沢商を6−4と逆転で退けた。埼玉栄は2回までに4点を奪い成徳大深谷の反撃を本間、芝崎の継投でしのいだ。

 第8日は2日、県営大宮で浦和学院−春日部東(12時)を実施し4強が出そろう。

◇刻んだ新たな歴史 南稜

 “南稜旋風”はどこまで続くのか。劇的なサヨナラ勝ちで過去6度の甲子園出場を誇る春日部共栄をのみ込んだ。初の関東切符に遠山監督も「信じられない」と興奮気味だ。

 四回まで0−3で無安打と、いつもの元気がなかった。ただ、五回の守備中に雨脚が強まり試合が中断。ここで三塁コーチを務める主将の武井からナインにげきが飛ぶ。「実力では勝てない。気力、体力で負けるな。全てを懸けよう」と。

 49分後、グラウンドに現れた選手たちはよみがえった。五回裏に敵失と初安打で1点差。六回には中田の適時打で同点に。九回に失策で勝ち越されたが決して下を向かない。その裏、葛城の中犠飛で、粘り強く再び同点に追い付いた。

 クライマックスは延長十二回。2死二塁から竹原が「きっちりミートした」打球は二塁手のグラブをはじき右翼前へ。二塁走者北出が「無我夢中」と俊足を飛ばし歓喜のホームイン。

 安打数は春日部共栄の半分以下の6本ながら5得点と、しぶとさは相当なもの。北出は「逆境に負けない練習をしてきた成果」と逆転勝利を誇っていた。

◇中断で流れ変わる 春日部共栄

 「負けたということは弱い」と本多監督はため息交じり。序盤のリードを守れず、春日部共栄がサヨナラ負けを喫した。

 四回まで3−0と快勝ペースだったが、降雨中断で暗転した。無安打に抑えていたエース青木が五回、四球から失策、初安打で2点を返されると、六回から代わった西沢も六回に同点打を許した。味方が4−3と勝ち越した九回にも自らのバント処理ミスなどで再び同点に追い付かれ、延長十二回に力尽きた。

 攻撃陣も14安打で4得点10残塁。主将の鎌田は「こんなところで負けているようでは、夏にてっぺんは取れない。負けにつながるプレーをなくす」と必死に前を向いた。

◇好機に主軸沈黙 浦和学院

 浦和学院は延長戦での3度の好機を生かせず、引き分けに持ち込まれた。四回に笹川が右前への当たりで二塁を陥れると、続く石橋が「思い切って振れた」と右前適時打で先制したが、春日部東の中継ミスにも助けられた1点だった。

 延長十二回1死二塁、十三回には2死満塁、十五回1死二塁の好機で主軸に一本が出なかった。「選手も受け止めざるをえない」と森監督。「気持ちで一人一人抑えた」と15回を完投した山口のためにも、明確な課題をクリアする必要がある。

◇若月が千金同点打 春日部東

 春日部東は2回戦の蕨戦に続き今大会2度目の延長15回ドロー。左腕エース熊谷が「相手が強ければ強いほど燃える」と球持ちのいいフォームから狙い球を絞らせず、強打・浦和学院打線を15回8安打1失点に抑えた。

 1点を追う九回2死三塁で、主将の若月が「思い切りのよさが出た」と初球の甘い直球を右前へ運ぶ値千金の同点打。投手陣は田中、丹羽とエース級が控えるだけに、中野監督は「天気のこともあるのでゆっくり考える」と再試合へ思案を巡らせていた。

◇川口、逆転劇で快挙

 地区大会から強豪を連破して勝ち上がった川口が初の4強入りで関東切符を手にした。鈴木監督も「粘ればチャンスがあると信じていた」と喜色満面。4月に春日部東に転任した冨沢前監督が見守る中「成長した姿を見せよう」と選手が一丸となった。

 五回を終え4点を追う苦しい展開。鈴木監督はグラウンド整備中に選手を集め「この展開でどうやって追い付くか。夏への練習だ」と選手の緊張をほぐすと、直後の六回、三浦が左翼フェンス直撃の適時二塁打で反撃の口火を切った。七回に丸山、関本の適時打で2点を返すと、八回1死一塁から今関の適時二塁打で同点に追い付いた。

 九回は2死から連続四球で一、二塁とし、粘りの投球を続けていた高窪が「苦しい中つないでくれたチームのために全力で振った」と、外角高めの直球を右越えに運んで試合を決めた。

 最後まで試合を楽しむことを忘れず、飾ることなく自分たちの野球を貫いた川口。初めて埼玉代表をもぎ取った逆転劇は大きな経験になった。

◇夏へ再出発誓う 所沢商

 所沢商は橋爪の適時打などで4点を先行しながら、まさかの逆転負けで関東大会出場を逃した。福地監督は「中盤から押され気味になり、持ちこたえられなかった」と疲れ切った表情で振り返った。

 「4点を取って勝ちを意識してしまった」と橋爪が話す通り、先発全員が2年生という若いチームゆえの甘さもあった。直球主体の真っ向勝負を演じた渡会は、「最後はバテてしまった。また鍛え直してベスト4に行きたい」と夏への課題を見出していた。

埼玉栄、継投で逃げ切り

 先制パンチを食らわせ、自慢の継投で逃げ切る。埼玉栄は、後半の戦いに課題は残したものの、3年ぶり5度目の関東切符を手中にした。

 一回に浜崎の中前打で先制すると、二回には敵失に乗じ好機を築き、高橋の2点適時打、坂本も右前打で3点を追加。投げても本間、芝崎の継投で2失点に抑えた。

 ただ攻撃陣は三回以降、飛球が目立ち無安打。主将の高橋は「終盤でも低くて速い打球が打てるように修正したい」と反省する。一方で細淵監督は「勝って経験を積めるのはいいこと」と関東出場を喜び、好リリーフした芝崎も「準決、決勝も勝ちたい」と新たな戦いに闘志を燃やした。

◇4強入り逃すも夏へ内容充実 成徳大深谷

 成徳大深谷は一、二回の4失点が響き、過去最高の4強入りはならなかったが、夏につながる内容だった。二回途中からリリーフした北村、工藤の両右腕が、埼玉栄打線を三回以降は無安打に封じた。攻撃陣も五回以外の毎回で走者を出し、あと一歩まで迫った。主将の福田は「秋よりは確実に力は付いた。もっと個の強さを磨きたい」と夏までの成長を誓った。

■準々決勝

【県営大宮】

春日部東
000000001000000=1
000100000000000=1
浦和学院
(延長15回引き分け再試合)
【春】熊谷−中村豪
【浦】山口−林崎
三塁打 松尾(春)
二塁打 及川(春)笹川、山口、林崎(浦)

川口
000001212=6
003010000=4
所沢商
【川】高窪−松崎
【所】渡会−金浜
二塁打 佐野、三浦、丸山、高窪(川)原、橋爪(所)

上尾市民】

成徳大深谷
001000010=2
13000000x=4
埼玉栄
【成】安藤、北村、工藤−福島陽
【埼】本間、芝崎−高橋
二塁打 高橋(埼)

春日部共栄
002100001000 =4
000021001001x=5
南稜
(延長12回)
【春】青木、西沢−田村
【南】高瀬、佐野−中田
二塁打 青木、田村(春)菅原(南)

埼玉新聞