浦和学院V2 県勢初、史上3校目 作新に5−0

 高校野球の第64回秋季関東大会最終日は4日、山梨県小瀬スポーツ公園野球場で決勝が行われ、県大会優勝の浦和学院が、栃木1位の作新学院に5―0で快勝し、2年連続3度目の優勝を飾った。連覇達成は1975年の小山(栃木)以来3校目で、県勢では初の快挙。浦和学院神宮球場で行われる第42回明治神宮野球大会(23日から5日間)に関東代表として2年連続出場するとともに、来春に甲子園球場で開催される第84回選抜高校野球大会(3月21日から12日間)の出場をほぼ決定的にした。

 浦和学院が盤石の試合運びで連覇した。三回に林崎龍也捕手、石橋司左翼手二塁打で2点先制すると、四回にも2点を追加。投げては伊藤祐貴、渡邊剛、山口瑠偉の1年生3投手のリレーで作新学院を6安打無失点に封じた。

 今春の選抜大会では初戦敗退。夏は県大会準決勝で敗れたが、佐藤拓也中堅手や笹川晃平右翼手ら主力が残ったチームは県大会では圧倒的な力で3連覇を達成した。

 県大会制覇から2日間の休養後、10月5日から練習を再開。森士監督は「この1カ月が大きかった」と振り返る。「意識が高く、集中して取り組んでくれた」と話す通り、選抜経験者を中心に2年生が1年生を引っ張った。気候も涼しくなったことで、夏の猛練習で培った力が格段に飛躍。迎えた今大会。昨年は佐藤投手頼みだったが、周りに支えられるように1年生投手陣が台頭。一抹の不安は大きな期待へと変わった。

 1回戦では前回選抜優勝チームの東海大相模(神奈川)に競り勝ち、準決勝は高崎健康福祉大高崎(群馬)、決勝は作新学院にいずれも快勝。森監督は「チーム力として非常に成果が挙がった大会」。甲子園に出場した最近5大会はいずれも初戦敗退しているだけに、ともに甲子園で勝利を挙げた選手を擁するチームに勝てたことは「甲子園でまず1勝」(森監督)へ、足場を固めつつある証し。ナインにとっても大きな自信になるはずだ。

 それでも、全国制覇を最終目標に掲げるナインに慢心はない。主将の明石飛真一塁手は「ここは通過点」。佐藤選手も「昨年は秋に勝って満足してしまった。同じ失敗は繰り返さない」と反省を生かすつもりだ。「全県民の期待を背負っている。今できることを積み重ねたい」と森監督。連覇に輝いたこの日が、浦和学院の本当のスタートとなる。

浦和学院、全員主役の連覇 1年生が完封リレー

 (4日・山梨県小瀬スポーツ公園野球場)

 最終日は決勝が行われ、今夏の全国選手権大会ベスト4の作新学院(栃木1位)に浦和学院が5−0で快勝し、2年連続3度目の頂点に立った。連覇は史上3校目で県勢としては初の快挙。

 浦和学院は好調な打線が序盤から得点し三回、林崎、石橋の適時二塁打で2点を先制。四回にも2死二、三塁から林崎の2点適時打で突き放した。八回は押し出し死球で1点を追加。投げては伊藤、渡邊、山口のリレーで作新学院打線を6安打無失点に抑えた。

 浦和学院は23日から、神宮球場で行われる明治神宮大会に関東代表として2年連続で出場する。

◇経験が生んだ相乗効果

 真っ赤に染まった応援席へ連覇の報告を終えると、主将の明石が森監督に近づき、そっとウイニングボールを手渡した。受け取った指揮官が笑顔でボールを掲げた瞬間、ナインが駆け寄り歓喜の胴上げが始まった。

 浦和学院が今夏の甲子園4強メンバーを数多く擁する作新学院に完封勝ちし、2年連続3度目の優勝。5度宙に舞った森監督は「頑張ってくれた成果だと思う。選手たちに感謝したい」と日焼けした顔をほころばせた。

 今大会の浦和学院の強さを象徴するような、盤石の試合運びだった。

 0−0の三回。初登板の先発伊藤が2死一塁から相手3番に四球を与えた場面で、森監督は左横の渡辺にスパッと変えた。託された1年生左腕が4番を中飛に仕留めると流れはこっちのもの。

 その裏、1死二塁から林崎の右翼線二塁打で先制。ここで終わらず石橋の二塁打で2点目を奪った。四回無死一塁を併殺で切り抜けその裏にも2死二、三塁から林崎の中前打で2点を追加した。

 投手も伊藤の後を受けた渡辺が九回1死までゼロで抑えると、最後は山口が締め1年生3人で完封リレーを完成させた。

 まさに相乗効果が生んだ栄冠だった。選抜を経験した佐藤、林崎ら2年生に引っ張られるように、投手陣が力を付けた。この日も無失策だったようにバックが投手を支え、期待に応えるように山口、渡辺ら1年生投手が台頭。前チームは佐藤に頼る部分が多かったが、今大会は計4投手が登板し、役割を果たした。打線も日替わりヒーローが誕生し、「一人一人が主役。目立った選手はいないが、力をコツコツと集結させてくれた」と指揮官。伸びしろをたっぷり含んだ関東連覇に、来春への期待も大きく膨らむ。

◇持ち味1日で修正 渡邊

 1日の準々決勝、3日の準決勝に続き、2番手で登板した左横の渡邊。三回2死一、二塁のピンチでマウンドに立つと、4番篠原を中飛に仕留め、勢いそのままに5回3分の2を3安打無失点に抑えた。

 準決勝では持ち味が出せずボールが先行、三塁走者時に捕手からのけん制球に刺されるミスもあった。気持ちを切り替えてわずか1日で投球を修正。「どんどんストライクを入れていった」とキレのある直球を中心に四隅に集めて凡打の山を築いた。

 「とにかくうれしい」と連覇を喜びながらも、九回にここまで2安打を浴びていた5番山下を迎えた場面で降板。優勝マウンドを譲り「最後まで投げたかった」と悔しげな表情を浮かべた。

 1年生ながら正確なコントロールを武器に、火消し役としてチームの連覇に貢献。春の選抜大会に向け「初戦を突破して全国制覇します」と力を込めた。甲子園のマウンドで次こそ歓喜の輪の中心に立つ。

◇打撃開眼 成長を実感 林崎

 1年生3人による完封リレーを演出した女房役の林崎がバットでも4安打3打点の活躍。「ボールが止まって見える」と絶好調の打撃で投手陣を援護。「ゼロに抑えられてよかった」と無失点勝利を誰よりも喜んだ。

 先発の伊藤が降板した直後の三回、1死二塁の好機で内角低めの直球を右翼線へ運び「ファウルになるかと思ったが、入ってくれて良かった」と先制の二塁打。四回も2死二、三塁で肩口から入ってくるカーブを中前へはじき返して2点を加えた。

 2死一塁で相手の中軸を迎えた二回の場面で、マウンドの伊藤に駆け寄り「打線が必ず点を取ってくれるから、ミットだけを見て自分のボールを投げろ」と激励。配球面でも「いろいろなタイプがいるので、いい球を引き出すため全員リードが違う」と緻密さが光る。

 「自分のプレーをするのがやっとだった」という昨年秋の関東大会に比べて「周りを見てプレーすることができている」と1年間の成長を実感。投手陣が全幅の信頼を寄せる背番号2が、埼玉の常勝軍団をけん引していく。

◇仲間の支えで納得の一振り 石橋

 1年春の関東大会から主力として活躍してきた石橋が三回、先制直後の2死一、二塁から外角の直球を「納得いく打撃が出来た」と左翼線を破る適時二塁打。「練習で教わってきたことをやるだけだった」と貴重な追加点を振り返った。

 夏場の苦しい時期が続き「殻にこもっていた」と打ち明ける。森監督からも「それじゃダメだ」と主軸としての気配りを求められた。苦難を乗り越え『いつも支えてくれた仲間』と勝ち取った栄冠は格別の味だったに違いない。

◇初先発の右腕「気迫」課題に 伊藤

 「行けるところまで何回でも」と初先発に臨んだ1年生右腕の伊藤。伸びのある直球を駆使して2回までを無失点に切り抜けたが、三回2死一塁から「中軸を迎えて気持ちが弱くなった」と3番高山に四球を与え、マウンドを降りた。

 1学年上の女房役・林崎とも「自分の投げたい球を要求してくれる」と相性抜群。大舞台を踏んだ1年生右腕は「楽天田中将大投手のように気迫で攻めていく投手になりたい」と、自らに課題を掲げるように精神面の成長を誓った。

埼玉新聞