明日への絆(4)所沢商・佐藤薫選手、狭山ヶ丘・佐藤忍主将

◇「チームのため全力で」 双子の兄弟、初戦で対決−−佐藤薫選手(所沢商・3年)、佐藤忍主将(狭山ケ丘・3年)

 6月17日の組み合わせ抽選会。私立狭山ケ丘3年の佐藤忍主将(17)=二塁手=は「当たっちゃいました」と苦笑いした。7月10日に初戦で対戦するのは、双子の兄薫選手(17)=外野手=のいる県立所沢商。「対戦してみたかったけど最初に当たりたくなかった」と頭をかいた。

 弟の忍選手は明るくて周囲をひっぱる性格に対し、兄の薫選手は物静かだ。「顔も違うし性格も正反対」と口をそろえる。2人は小学2年の時から、父俊浩さん(42)が当時監督を務めていたリトルリーグでプレーしていた。打順は兄が1番で、弟が2番。兄が塁に出ると、弟は「目を見ただけで盗塁するかどうか分かった」と、盗塁をアシストした。

 しかし、けんかは絶えなかった。リトルリーグで主将を任されたのは弟の忍選手の方だった。試合でミスをした兄を、弟が怒り、衝突したこともあった。薫選手は「主将の忍に素直になれなかった」と明かす。2人は、2キロほど離れた別々の高校で野球をやることを決めた。

 薫選手の気持ちが変化したのは、高校入学後。所沢商でミスをした際に福地利彦監督に注意された。「あの時怒った忍の言葉には意味があったと気付いた。もっと言うことを聞いていたら良かった」と思うようになった。

 一方で忍選手は「薫には勉強でも野球でもかなわない」と感じてきた。高校入学後、朝早く出て遅くまで野球を頑張る薫選手の姿に、「薫も頑張っている。負けたくない」と励まされた。

 6月下旬、帰宅後に自宅前で素振り練習を行う兄弟の姿があった。「学校が変わって歩み寄れるようになった」と2人は話す。忍選手のスイングを見て、打撃が得意な薫選手が「強く振れてるぞ」と声をかける。一方の忍選手は試合で打席に立つ時、薫選手の「楽に打て」とのアドバイスを思い出すようにしているという。

 父俊浩さんは兄弟の対戦に「どちらにも勝たせてあげたい」と複雑だ。2人は、野球は高校までと決めているという。だからこそ、2人は「チームの仲間のために手加減はしない」と全力で戦うことを誓う。=つづく

毎日新聞埼玉版)