立教新座高野球部、五輪銀のOB・高林氏が監督に就任

 立教新座高(新座市、渡辺憲司校長)の野球部監督に、同校OBでアトランタ五輪銀メダリストの高林孝行さん(43)が就任した。後輩たちを率い、自身が出場した85年以来の甲子園を目指す。

 高林さんは、東京・神田神保町で仏教書専門の古書店「東陽堂書店」を営んでいる。午後2時過ぎまで仕事をこなし、地下鉄で同高へ向かう日々だ。

 グラウンドを訪ねると、トス打撃を終えた選手を集め「ダラダラやっても意味はない。全力を出そう」と話しかけていた。その後、先ほどより低い姿勢でトスの自主練習に励む選手を見つけ、「意識を持ってやる子がいるのはありがたい。継続すればうまくなる」とほおを緩めた。

 球歴は華麗だ。立教高(当時)3年だった85年、夏の甲子園に出場し2回戦に進んだ。夏の出場は、県内の私立校で初だった。

 立大では内野手として活躍し、4年時の89年秋、23年ぶりに東京六大学を制した。日本石油(現JX−ENEOS)で外野手に転向し、93、95年の都市対抗野球で優勝。96年のアトランタ五輪では1番打者ながら4本塁打を放った。

 山本哲也主将(2年)は「就任が決まって(新監督の経歴を)携帯やパソコンで調べて驚いた。先輩として尊敬できる」と話す。

 97年に選手を引退。「いつかは家業を継ぐものと思っていた」と、1924(大正13)年創業の老舗である実家で、父恒夫さんについて修業を始めた。

 古本市場へ通って目利きを学んだ。顧客は研究者や僧侶など専門家ぞろい。09年に父が他界してからは社長の重責を担うが「今でも難しい。平安時代の書物だってあるんですから」と苦笑する。

 昨年末、渡辺校長に監督就任を打診されたが固辞した。だが父の遺品を整理中、立大野球部OB会の会報で、母校への感謝をつづった父の一文を目にした。父も立教高で55年センバツに出場し、立大や巨人でプレーして家業を継いでいた。

 「そろそろ恩返ししろ、ということか」と腹をくくった。平日のほか土曜日や、古書店が休みの日曜もグラウンドへ来る。「大変ですよ」と言いながら「自分がやってきたものがありますから。甲子園に行けるよう手助けはできる」と自信を見せた。

毎日新聞埼玉版)