1人ひとりの手になじむグラブを… 球児支え20年

 「熱闘甲子園」と書かれた直径約6メートルの巨大なボール型の看板が目を引きつける。さいたま市大宮区大門町3丁目の野球用品専門店「石原スポーツ」。店主の石原厳(たかし)さん(43)は技と手間をかけて、手によくなじむグラブを作り、甲子園を目指す球児たちを支えている。

 既製品のグラブを湯につけて革を柔らかくしもみほぐす。乾燥させた後にまた、たたいたり、ほぐしたりして型を付けて、選手一人ひとりの手の大きさや形に合ったグラブに仕上げる。

 「型付け」は、久保田運動具店福岡支店(福岡市)の江頭重利さん(78)が約50年前に考えた。石原さんは「埼玉の球児にも手にフィットしたグラブを」と、20年ほど前、江頭さんを訪れて、技術を学んだ。一つひとつがオーダー作業。1個を仕上げるのに3、4日かかる。

 横浜ベイスターズ木塚敦志投手、西武ライオンズ石井義人選手……。店内には、石原さんがグラブを型付けしたプロ野球選手らのサインボールが数多く並ぶ。

 浦和実の捕手、上地修平君(2年)もそのグラブを使う。「中学1年の頃から石原スポーツによく来ている。はめた瞬間から、自分の手に合う」と話す。今年の同校野球部では、15人ほどが石原さんの世話になった。

 甲子園に出場した選手も、1回戦で負けた選手も礼を言いに来る。「やっててよかった」と感じる瞬間だ。

 石原さんは「最後の瞬間まで、あきらめないで頑張ってほしい」と選手全員にエールを送る。

朝日新聞埼玉版)