壁を越えろ あと一歩の甲子園<5>坂戸西高校

◇浦学戦への思い秘め

 2002年の準優勝校の坂戸西にとってBシードで臨む今大会は初の甲子園へ大きなチャンスだ。左腕エース長島を中心とした守りのチームは安定した戦いぶりで秋春連続ベスト4入り。頂点へ手が届く可能性を示した。

 練習は和気あいあいとしたムードに包まれている。野中祐之監督は「いつもこんな感じですよ」とほほ笑む。公式戦は土壇場で集中力を発揮し、しぶとく競り勝ってきたが、グラウンドにその面影はあまりない。主将で捕手の安斎は「抜くときは抜く。でも、大会が近づくと表情が変わる」と仲間を信頼する。

 昨秋の公式戦は勝った5試合のうち1点差が4試合。今春も5試合中3試合と接戦をものにしてきた。だが、準決勝では秋、春ともに浦和学院の壁に跳ね返された。

 秋は1−3。長島の投球は通用したが、得点力が足りなかった。春は力を入れて取り組んできた走力が機能し、互角以上の戦いを見せた。だが、延長十三回4−5で惜敗。長島は「チームがレベルアップした。浦学は遠くない相手」と夏に手応えを感じている。

 準優勝した02年も決勝で浦和学院に屈した。チームは初戦の2回戦から先発9人を打順もまったく変えずに起用。決勝ではそれまで失点ゼロで勝ち上がってきた須永投手(現日本ハム)から、大会初得点を奪ったが、1−6で敗れた。当時指揮した熊沢光前監督(現川越工)は「公立校が勝つチャンスはそんなにない。たった一度をいかにものにするかが大事」と思い返す。

 坂戸西はもともと部活動が盛んな校風を持つ。監督も代わり、選手も入れ替わったが、準優勝を記念したプレートや当時の写真は今も校内に飾られている。安斎は「準優勝は素晴らしいと思うし、自分たちも行けたらいい。そのためにも浦学を倒さないと」と気持ちを新たにする。

 夜9時まで自主練習を続ける選手たちを見ながら、野中監督はしみじみと語った。「坂西野球はノーサインが理想だが、目標もノーサイン。口に出さないだけで、秘めたものは全員がある。『浦学を倒して甲子園に行くって分かってるだろ』ということです」。

埼玉新聞