仲間に支えられ成長−−五明大輔投手(3年)

 子供好きで、「プロ野球もいいけど保育士になりたい」。中学生の時、可愛がっていた飼い犬が死んで涙を流した。母の恵さん(45)は「優しくて甘い物好き。でも、負けず嫌いな面もあります」。

 この試合、1人で148球を投げ抜いた。昨秋は振るわず、復調を期待されて臨んだセンバツ。初戦では嘉手納(沖縄)を無四球完封し、「ひと冬越えてたくましくなった」と岩井隆監督を驚かせた。気持ちの弱さを克服できた理由を問われると、「寺井に支えられた」と、励まし合ってきた仲間の名前を挙げた。

 「あれやろーぜ」。試合開始直前、ベンチ前で親友の寺井聖明選手(3年)に声をかけられると、利き手の左手でハイタッチ。続けて拳で互いの胸を軽く打つ、2人だけの“儀式”。「あれをやると心強いんです」

 入学時から互いの大らかな性格が合い、仲良くなった。しかも、寺井選手は中学3年まで投手。「五明は寂しがりやだし、投手は試合前、一番緊張するもの。こんなことができる相手が一人でもいたら助かるんじゃないかと思って」

 仲間に支えられ、成長の跡を見せた甲子園。「全員でやれば勝てると思って……」。試合後、優しさが戻った目に涙があふれた。

毎日新聞埼玉版)