花開け・徳栄のセンバツ:打って投げて、徳栄完勝

◇沸くスタンド、好守でエースもり立て

 2万7000人が詰めかけた甲子園で、7年ぶりに花咲徳栄の校歌が響き渡った−−。第82回選抜高校野球大会が21日開幕し、花咲徳栄は同日の第2試合で初出場の嘉手納(沖縄)と対戦した。不振だった昨秋とは見違えるように復調したエース五明大輔投手(3年)が無四球完封。打線も毎回の12安打で応えた。2回戦は大会第6日第2試合(26日午前11時半開始予定)で、敦賀気比(福井)と対戦する。

▽1回戦第2試合

嘉手納
000000000=0
01000021×=4
花咲徳栄

 1点リードで迎えた七回裏1死一、三塁の好機。「五明が頑張っている。援護しなきゃ」と意気込んで打席に立った3番、木村駿斗(はやと)選手(3年)がスクイズを決めると、スタンドは沸きたった。「まさにチームプレーです」と大喜びする木村選手の父圭二郎さん(42)。岩井隆監督は試合後、「打たせてあげたかったが、どうしてもあと1点が欲しかった」と話した。

 直後には、4番、戸塚瞬選手(3年)の遊撃へのゴロがセンター前に抜け、さらに1点。八回裏には、橋本祐樹選手(3年)が右翼席に大会第1号本塁打を放った。

 「不調のときに支えてくれた仲間に恩返しがしたい」と誓っていた五明投手。「初回は緊張した」と振り返るが、勢いのある直球とスライダーを使い分け、相手の好打者を次々に打ち取った。

 二回裏に先制すると、アルプススタンドの応援団長、山村香織さん(3年)は「このまま波に乗って」。

 その後も好守備で試合の主導権を握り続けた。四回表には2死三塁でヒット性の飛球を、遊撃の佐藤卓也選手(3年)が懸命に追いかけて飛びつく。五回表には、センターの戸塚選手が浅い飛球をダイビングキャッチした。

 攻守にわたって援護を得た五明投手は最後まで制球がさえ、完封。「ほぼ完ぺきでした」と笑顔で自身の投球を振り返った。スタンドで観戦した妹の望さん(15)も「あんなにすごいお兄ちゃん初めて」と喜んだ。

◇こいのぼりも応援

 花咲徳栄の応援席に、選手の母親たちが勝利を祈って折った2000個の千羽ヅルと地元加須市特産のこいのぼり(長さ約30センチ)、トラのキャラクターが一体となってお目見えした。

 木内達也捕手(3年)の母順子さん(46)は雨を心配し、折りヅルに防水スプレーをかけて備えた。こいのぼりは、五明大輔投手(3年)の母恵さん(45)がフェルトに綿を詰めて手作り。コイにまたがるトラは初代校長のえとにちなんだ学校のキャラクターで、夏目孝太選手(3年)の母粧佐美(まさみ)さん(46)がこいのぼりと同じようにして作った。恵さんたちは「母たちの愛情を込めた合作です」とにっこり。

吹奏楽部も元気に

 アルプススタンドを盛り上げたのは吹奏楽部の2、3年生51人。選手ごとに1曲ずつと場面に応じた曲の計30曲を準備し、甲子園で元気に演奏した。今月10日から1日6時間半の集中練習で仕上げた。学校から9時間かかった甲子園までのバス内では、楽器を使えないため、音符をみんなで歌いながら曲を確認。主将の島田瑞菜さん(3年)は試合前、「私たちの音を相手スタンドまで飛ばします」と話し、トランペットに一生懸命息を吹き込んだ。

◇人文字で一丸に

 花咲徳栄の応援団が陣取る一塁側アルプススタンドには、1年生約600人が赤と青に分かれてウインドブレーカーと帽子を着用し、青地に赤い「花」の字が浮かび上がる人文字を作った。茶道部の坂庭なつみさん(2年)は「気持ちは選手たちと一丸です」と元気よく話した。

◇我慢強く打った−−岩井隆監督の話

 前半は好機を生かせなかったが、いい当たりは出ていたので、焦りはなかった。相手投手は甘い球が少なかったが、野手が本当に我慢強く打ってくれた。五明は一冬越えてたくましくなった。

◇五明は期待通り−−根建亮太主将の話

 打順が一巡したあたりから緊張がほぐれ、チームの皆の動きが良くなった。五明は期待通りの投球をしてくれた。次の試合も打線のつながりと堅い守備を生かした、自分たちの野球を徹底したい。

毎日新聞埼玉版)