笹川晃平右翼手、母の思いに報いる一打

 一回裏1死一、三塁の好機で打席が回ってきた。「やるだけのことはやってきた」。心の中で唱え、初球から迷わず振った打球は二遊間を破った。

 昨秋から4番を任された。全国から地区優勝校が集まる神宮大会愛工大名電(愛知)に敗れてからは、弱音は吐かないと決め、練習から妥協が無くなった。支えになったのは小学1年の時から会社員として一家を支える母美加さん(40)の存在。仕事が終わった深夜にユニホームを洗ってくれた美加さん。茨城県古河市の自宅を離れ、浦和学院への入学に悩んだ時には「費用の心配はしないの。後悔しないように頑張りなさい」と背中を押してくれた。

 甲子園にたつ前日、美加さんがこれまで洗剤や靴下と一緒に寮に送ってくれた手紙を読み返し「お母さんの苦労が実るようなプレーを見せたい」と心に決めた。大舞台の準々決勝で、4打数2安打1打点と4番の仕事を果たし、九回表には右前に落ちた打球を二塁に送球し、走者をアウトにする好守備を見せた。

 「全力でやったから悔いはない。もっと練習して、今度はチームが一丸となって戦っている姿を見せたい」。夏に向け、表情を引き締めた。

毎日新聞埼玉版)