聖望学園、埼玉栄が勝利 高校野球2日目

 第2日は10日、11球場で1、2回戦の計24試合が行われ、昨年優勝の聖望学園は七回、鹿島が決勝ソロを放ち、大宮武蔵野に2−1で競り勝った。同準優勝の埼玉栄は浦和工に12−3でコールド勝ち。

 坂戸は延長十回に2点を奪い、4−3で八潮南を破った。春日部は東農大三に6−5で逆転勝ち。所沢は2−1で狭山ヶ丘の追い上げを振り切った。大宮東の高山は2打席連続アーチを放った。

 この日登場したシードの昌平、秩父農工科、浦和北はそれぞれコールド発進。

 第3日は11日、県営大宮など11球場で1、2回戦計23試合が行われる。

◇逆転呼んだ信頼感 春日部

 1回戦注目のカードは逆転に次ぐ逆転。最後に沸いたのはえんじ色に染まる三塁側スタンドだった。春日部が東農大三に競り勝った。就任1年目の曽我監督は「すごい試合。生徒がよく集中してやってくれた」と気持ちよさそうに汗をぬぐった。

 1年時から中軸を担う3番丸山、4番西脇の3年生が勝負どころで力を出した。まずは丸山。三回1死満塁で先制の2点左前適時打を放つと、五回1死一塁では右翼席に放り込む2ラン。「真ん中に入ってきたので思い切りいった。打った瞬間入ると思った」と2球目の甘い直球を見逃さなかった。

 5−5で迎えた九回は、1死一、二塁の好機に丸山が二邪飛に倒れたが、続く西脇が追い込まれながら殊勲の決勝打。「ベンチ、スタンドの応援の力で打てた。どんな球でも食らい付いていった」。バットを指2本分短く持ち、長打を狙わず、右前におっつけるしぶとさが光った。

 バッテリーの小野−広木と、八回から救援した斎藤も2年生。粘りの投球を続ける下級生を上級生がバットで支えた。小野は「丸山さんは本塁打を2本打つと約束してくれた。西脇さんは一番大事なときに打ってくれる」と全幅の信頼を置く。2回戦も難敵の西武台だが、この勝利で勢いがつきそうだ。

◇“目標の父”へ一歩 秩父農工科の増井伸博監督

 「初勝利おめでとう」。Dシード秩父農工科の監督として初の夏を迎えた増井伸博監督(43)に、かつて秩父農工を37年間率い、多くのファンに愛された父、敏夫さん(72)がそっと歩み寄り笑顔で握手を交わした。

 敏夫さんは2006年、部員の意思を尊重した粘り強い指導が認められ、日本高野連の育成功労賞を受賞した。伸博監督は同高のコーチ、部長を経て、昨秋に監督に就任。自分と同じ道を歩み始めた長男に「大変だけど思い切って頑張れ」と声を掛けたという。

 大会には必ず訪れる敏夫さんは、テレビの解説席から戦況を見守った。試合は19安打の猛攻で、妻沼に24−1で圧勝。敏夫さんは「やりにくかっただろうけど、畳み掛ける野球は見事だった」と顔をほころばせる。

 伸博監督にとって、父親は勝負師であり、生徒の扱い方、試合運びなど、まねできない雲の上の存在というが、「わたし以上にスクイズや犠打は使わない」と敏夫さんは笑う。強気に攻めまくる野球はまさに父親譲りだ。

 “社会に通用する人間の育成”を掲げる伸博監督に、「とにかく自分の信念を貫いてほしい」と、真っ向勝負で挑み続けた敏夫さんならではのエールを送った。伸博監督は少し照れながら「父のような監督になるのが目標です」。力強く父と同じ階段を上り始めた。

埼玉新聞